「今年」とは書かない——時間が経っても腐らない記事の書き方

記事を書いた直後は問題ない。でも、年を経て読むと少し混乱する表現があります。

「今年」「昨年」「先月」「最近」「現在」——。

こうした時限的表現は、書いた時点では正確です。でも、記事は公開後も検索でヒットし続けます。3年後に読んだ読者には、「今年」がいつのことか、まったくわかりません。

これが、時制の絶対値表記のルールが必要な理由です。

「今年」はいつか「今年」でなくなる

すぐに消える記事でないかぎり、年を経て掲載し続けることを念頭に置くようにしています。

Web記事は検索や口コミによって参照され続けます。オウンドメディアの記事は、社内の資料として使われることもあるでしょう。インタビュー記事は、発言者の実績紹介として何年後かに引用されるかもしれません。

「今年リリースした新機能について」と書いた記事が、3年後に検索でヒットする。読者は「今年っていつ?」と混乱します。あるいは、古い情報を最新のものと誤解します。

これが記事の陳腐化です。読者の混乱を招くだけでなく、媒体や発注元の信頼を損ないかねない問題でもあります。


AIにとっての「今年」は?

生成AIに文字起こしをもとに記事を書かせると、「今年」「最近」「現在」という表現が頻出します。

理由は単純で、発言者が「今年」と言っていれば、AIはそのまま「今年」と書きます。また、文脈から「最近の出来事」を表現しようとするとき、AIは「最近」という便利な言葉を使いがちです。

指示がなければ、AIは「読者が何年後に読むか」を考慮しません。書かれた瞬間の文脈で最適な表現を選ぶだけです。

もう一つ、見落とされがちな問題があります。生成AIモデルには学習データのカットオフ(知識の締め切り日)があります。たとえば2025年に学習されたモデルは、2026年になっても「今年」を2025年と解釈することがあります。2026年の出来事を「未来のこと」として扱ってしまうケースもあります。


CLAUDE.mdのルール

アンジーのCLAUDE.mdには、以下のルールを明記しています。

絶対遵守事項:
- 年月は絶対値表記(「今年」「昨年」禁止 → 「2025年」と明記)
- 「最近」「現在」「先日」も可能な限り具体的な時期に置き換える
- 発言者が「今年」と言っていた場合、文脈から年を特定して置き換える

たとえば:

時限的表現(修正前)絶対値表記(修正後)
今年リリースした2025年にリリースした
昨年の調査によると2024年の調査によると
先月発表されたレポート2025年2月に発表されたレポート
最近のトレンドとして2025年初頭のトレンドとして
現在は〜の状況です2025年3月時点では〜の状況です

なかでも「現在」は見落としやすい時限的表現です。「現在、100社以上に導入されています」——この文は、記事を書いた時点では正確です。しかし1年後には状況が変わっているかもしれません。「2025年3月時点では100社以上に導入されています」、あるいは「導入実績は2025年3月時点で100社を超えた」と事実の記録として書き換えることで、情報の鮮度が保たれます。


「発言者が今年と言っていた場合」はどうするか

ここで一つ、実務上の判断が必要になります。

発言者がインタビューで「今年の春に〜」と言っていた場合、AIはその発言を引用として「今年の春に〜」とそのまま書くことがあります。

この場合、引用の中の「今年」は発言者の言葉なので、勝手に変えると改ざんになります。対応方法は2つです。

方法1:引用の後に注記を入れる

「今年の春に新しいチームを立ち上げました」(2025年春——編集部注)

方法2:間接引用に切り替える

2025年春に新しいチームを立ち上げたという。

弊社では、短い引用で時期が重要な場合は方法1、引用を地の文に溶かせる場合は方法2を選ぶことが多いです。CLAUDE.mdにもこの判断基準を記述しています。


取材日・公開日をAIに渡しておく

絶対値表記を正確に行うには、AIが「いつの話をしているのか」を把握している必要があります。そのために、いつも使っているCLAUDE.mdでは記事制作の開始時に以下の情報を設定するよう定義しています。

コンテンツ情報:
- 取材実施日:YYYY年MM月DD日
- 公開予定日:YYYY年MM月DD日

これを設定しておくことで、発言者が「今年の春に〜」と言っていた場合、AIは取材日をもとに「2025年春に〜」と自動的に置き換えられるようになります。また、「現在」という表現を「2025年3月時点では」のように具体化する際も、公開予定日を基準にすることができます。

取材日と公開予定日は、文字起こしファイルやプロジェクト前提ファイルに必ず記載する必須項目です。この情報がなければ、AIは絶対値表記への変換を正確に行えません。記事制作を始める前に、この2つを必ず用意しておきましょう。


絶対値表記は「記事の鮮度管理」

絶対値表記は、単なる表記ルールではありません。記事の長寿命化を実現するための設計です。

「今年」と書いた記事は、翌年には陳腐化します。「2025年」と書いた記事は、10年後に読んでも「2025年時点の情報」として正確に機能します。時限的表現をなくすことが、コンテンツの鮮度を保つ最も確実な方法です。

生成AIはこの視点を持ちません。だからこそ、CLAUDE.mdに明記することで、AIが生成する記事のすべてにこのルールが自動適用されます。


「え、そんなことも指示するの?」と思ったら

ここまで読んで、「そこまで細かく指示しないといけないのか」と感じた方もいるかもしれません。

そうです。AIは指示しないとやりません。でも逆に言えば、指示したことはだいたいやってくれます。一度CLAUDE.mdに書いておけば、以降のすべての記事に自動適用されます。たまに忘れることもありますが、毎回「今年って書かないで」と言う必要はなくなります。

これがCLAUDE.mdの本質的な価値です。長年かけて身につけた「当たり前の作法」を、一度ファイルに書いておけば、AIが毎回再現してくれます。

なお、「今年(2025年)に〜」のように初出で絶対値を明示した場合は、同一記事内で「来年」「昨年」と書いても読者は認識できるはずです。このように、すべて絶対値表示ではなく、さまざまな方法で時制を示す方法もありますので、それは媒体や記事のルールとして定め、CLAUDE.mdに記しておくといいでしょう。


次回は、文末表現の多様化ルールを解説します。「〜です」「〜です」「〜です」と続く単調な文章をどう防ぐか。AIが陥りやすいこのパターンと、CLAUDE.mdでの対処法をお伝えします。

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https://andg.net/kiji-base