ベテラン編集記者の作法を、その日から自分の案件へ―暗黙知を移すAI記事制作プロンプトの導入 / 取材ライター 石原健児 様

概要

神奈川県を拠点に活動する取材ライターの石原健児様は、アンジーが記事内製化の伴走支援サービス「KIJI Base(キジ・ベース)」で配布する記事制作プロンプトを、自身の実案件に導入しました。印刷会社の営業職から独学でライターへ転じた石原様には、BtoB記事で扱う文章の基本ルールが体に染みついていないという自覚がありました。

アンジーの配布するプロンプトを採用した決め手は、30年以上編集の現場に立つ制作者の判断基準が記されている点です。普段利用している対話型AIにそのまま読み込ませて使えるため、すぐに運用に移せました。結果、毎月受注している店舗紹介記事は2〜3時間から1時間へ、2時間半のライブレポートは3〜4時間の想定からチェック込み1時間へと短縮されています。

抱えていた課題

  • 独学・副業からライターを始めたため、文末表現の重複や引用の分量といった編集の基本ルールが身体化しておらず、記事の品質を自力で担保しきれない不安があった
  • 文字起こしから要素を抜き出して構成を組み立てる工程が手作業で、素材が長く複雑になるほど時間を消費していた
  • 数年前に試したAIは方向性の違う原稿を返すため、記事制作には使えず、用途を情報収集に限定していた

得られた成果

  • 30年以上の編集経験に基づく作法がプロンプトに実装され、基本ルールを満たしたたたき台が最初から出力されるようになった
  • 開発環境の構築を伴わず対話型AIに読み込ませるだけで、受け取ったその日から進行中の実案件に適用できた
  • 店舗紹介記事は 2〜3時間から1時間へ、2時間半のライブレポートは 3〜4時間の想定からチェック込み1時間へ 短縮した

使用したもの

  • 提供物:KIJI Base の中核である記事制作用の指示ファイル「CLAUDE.md」(テキストファイル1つ)
  • 実行環境:Claude/ChatGPT/Gemini などの対話型AI(開発環境の構築は不要)

独学で積み上げた1,280件の実績と、「体に身についているわけではない」という自覚

石原様は、医療や不動産領域などを軸に活躍する取材ライターです。医療従事者への取材は2017年に始まり、大学医学部の教授やクリニックの理事長など、これまでに1,000人ほどの医師から話を聞いてきました。分野が偏らないようイベント取材にも領域を広げ、2025年からは地域の不動産会社の仕事を継続しています。取材実績は1,280件(2025年11月現在)に達し、月に10〜20件のインタビューをこなす日々です。いま最も力を入れているのは、AIには置き換えられない対面でのインタビューだといいます。

キャリアの出発点は印刷会社の営業です。約15年のあいだに制作担当と原稿をやり取りし、独学でデザインも学びました。BtoB領域のコンテンツ制作の経験を活かしてライターに転じ、クラウドソーシング経由で受けた仕事のなかで出会ったのが医療分野でした。

実績を重ねる一方、独学と副業から始めたキャリアには自覚もありました。「副業で始めて、経験がない中でやっていますので、記事作成の基本的なルールが体に身についているわけではありません。うっかりそこが漏れてしまうことがあるんです。たとえば文末に同じ表現が連続したりします」と打ち明けます。

さらに厄介なのは、その基本ルールの中に、書物をあたっても確かめようのない領域があることでした。石原様は「記者の文と、インタビューイーの発言の割合というのは、本にもあまり載っていません」と口にしました。その配分は、編集の現場で身につける肌感覚の領域にあります。「4割を超えると多いな、くらいの認識はありましたが、執筆時は『発言の引用はこれくらいでいいだろうか』と常に迷いながらすすめていました」

制作の工程そのものにも時間がかかっていました。文字起こしはAIのサービスに任せていたものの、そこから先は手作業です。起こしたテキストを読んで流れを決め、引用する言葉をコピーしておき、組み立てる。生成AIでの執筆も試しましたが、見当違いの原稿が返ってきたため、時には修正のため、かえって時間がかかること少なくありません。そのため、AIの活用は主に情報収集に絞っていました。

「記者の文と、インタビューイーの発言の割合というのは、本にもあまり載っていません」

30年分の編集の作法を、対話型AIに貼るだけで自分の案件へ

石原様がKIJI Baseのプロンプト利用をしようと思った動機は、作業時間の短縮ではありませんでした。「30年以上、編集されてきた、この業界に携わられたベテランが作った記事作成プロンプトという、そこにビビッと引かれました」

KIJI Baseは、AIへの業務指示ファイル「CLAUDE.md」とプロ編集者の伴走を組み合わせ、企業や個人のコンテンツ制作の内製化を支援するアンジーのサービスです。石原様に提供されたのは、その中核にあたる記事制作用のCLAUDE.mdでした。記事タイプの選択、口語から文語への整形、文末表現の重複回避、発言と原文の照合といった、編集者が原稿に向かうときの判断手順が文章として書き出されています。

石原様が本には載っていないと語った引用の分量も、記事全体の15〜30%という管理基準として明文化されています。アンジー代表・森英信の30年以上の編集経験から導かれた設計値です。あくまでも目安として提示しているものですが、本来なら何本も書いて体得するしかない感覚が、ファイル1つに移されている形になります。

現在このプロンプトは、1つのテキストファイルとして提供されています。開発環境を用意せず、ClaudeやChatGPT、Geminiといった対話型AIのチャット欄にそのまま読み込ませて使うことができます。

進め方は、文字起こしと資料をチャットに渡し、プロンプトが冒頭で尋ねる設定に答えるというものです。記事タイプ、「です・ます」または「だ・である」の文体、構成方針、想定文字数、公開時期など……回答を返すと、そこから先はプロンプトが構成と下書きを組み立てます。

検証の題材に選んだのは、性格の異なる2本でした。1つ目は、地域の不動産会社から毎月受注している店舗紹介記事(記事A)です。新規出店した店舗の店主への30分ほどのインタビューを、不動産会社が物件オーナー向けに発行する情報誌用に800〜1,000文字へまとめます。2つ目は、すでに納品を終えていたVTuberのライブレポートを「1,500文字で作成したら」という設定で再現したもの(記事B)です。この検証の目的は、自分の手で書いた結果との差を測ることでした。

結果について石原様は、事前に提出したレポートに「A、Bともに、多少の修正を加えて提出できる内容に仕上がりました」「通常の対話型AIでも問題なく使えるレベルと感じました」と記しています。プロンプトには、出来上がった原稿を自己採点させる指示も含まれています。この点について石原様は、「今後の仕事に活かせそうです」と評価しました。

「ベテランが作った記事作成プロンプトという、そこにビビッと引かれました」

2〜3時間が1時間に。長い取材ほど効いてくる効果

記事Aの制作時間は、従来の2〜3時間から1時間へと縮まりました。工程のどこが消えたのかを尋ねると、石原様は「内容を、パーツを持ってきて、それを組み立てるところです」と答えます。手元に残ったのは、出てきた原稿への最終的な仕上げと修正です。

「1から考えるのと、ある程度、文章の基本的なところも踏まえたものがポンと出てきて、それを修正するのとでは、やはり違いますよね。この表現は自分に少し合わないから変えようと、推敲しやすいです」と石原様は語ります。

記事Bでは、素材の難易度が高いぶん効果がはっきり出ました。2時間半のライブの素起こしデータには、歌唱15曲とMC、さらに観客からの掛け声やツッコミが交互に入り込んでいます。どこが話しているところなのかを判別しながら要素を抜き出す作業は、自分で手を動かせば3〜4時間はかかると見込んだ仕事です。それがチェック時間を含めて1時間で仕上がっています。「今後、同じような2時間半のライブレポートという依頼が来たときは、自信を持って受けられる状態になりました」

効果が最も出る場面として石原様が挙げるのは、話の長い取材相手です。「こちらが一言話すと5分ぐらい話される方もいらっしゃいます。普通にインタビューする方の倍ぐらいの文字起こしになってしまったり、順序立てて話していただけないこともあります」。そうした素材ほど抜き出しに手間がかかるぶん、プロンプトの効き目は大きくなります。

「引用率を定めて、重要なものだけ抜き出してもらえるのは、非常にありがたいと思います」

任せるのはたたき台まで。エビデンスと現場は、人が持つ

一方、AI全般については慎重な姿勢を崩していません。ハルシネーション(もっともらしい誤り)への不安は残るといい、AIが示したリンクは必ず自分で開き、たとえば、省庁の発表を引いたニュース記事であれば省庁のページまで遡って確かめています。「ネットに情報を公開していないということは、AIでも出てこないということですから、そこは限界の一つでもありますね」。ホームページを持たない医療事業者もあり、そうした相手の情報は訪問先で集めるほかありません。

今後への期待として挙げるのは、法規チェックの仕組みです。医療分野の薬機法、不動産分野の法規制など、扱う領域には常に法的なリスクが伴います。「最終的に、AIがこう言ったからといっても、誰も納得してくれないと思うんですよね」。最後は自分で確認してエビデンスを示すことになるため、その参照や提示がしやすい仕組みを望んでいます。インタビュー自体がAIに置き換わる可能性もありますが、人が現場に足を運んで話を聞き、写真を撮る行為は残ると考えています。

最後に、このプロンプトを勧めるとしたらどんな人かを尋ねました。「決まった形式のものを書く方や、時間を短縮したい方はもちろんです。それに加えて、駆け出しのライターで基本的なところがわかっていない、不安があるという方ですね。これまでの編集記者の経験に基づいて、一定レベル以上のものをまずボンと出してもらえるというのは、非常にありがたいと思います。そういうものを求める人には、おすすめしたいですね。既に既存のAIを記事制作に利用していて、作成された文章に満足できない方にも、ぜひ一度試してみてほしいと思います」

アンジーはKIJI Baseを通じて、編集の現場で培われた作法をAIへの指示ファイルという形に落とし込み、それぞれの現場ですぐに使える状態で届ける取り組みを続けてまいります。


プロフィール

石原 健児 様(取材ライター)

  • 拠点:神奈川県相模原市
  • 活動領域:医療・不動産分野を中心とした企画・取材・執筆、イベント取材
  • 取材実績:1,280件(2025年11月現在)/月10〜20件のインタビュー

印刷会社の営業職として約15年勤務した後、広告代理店でデザイン職を経験し、2016年に独立。現在は医療従事者や不動産オーナー、企業代表への取材を中心に、Web媒体と紙媒体の双方で執筆されています。企画立案からアポイント取得、質問項目の作成、取材、記事作成までを一貫して担当できることが強みです。仕事を離れた個人の活動としては、Substackで日本語と英語による発信を始められ、あわせて英語学習にも取り組まれています。