事例記事はBtoBの最強コンテンツです。アンジーでも毎月複数本の事例を受託制作しています。多くの企業は私たちのような制作会社に依頼するのが一般的ですが、簡単なものであれば、自社の材料を整理するだけで、AIを活用して短時間で草稿にたどり着けます。これは、事例記事には再現性のある「型」が存在するからです。
私たちは、企業のセルフ事例制作を支援することで、より多くの魅力的な事例を展開できると考えています。本稿では、事例記事の目的とステークホルダーを整理したうえで、基本構造を解説し、アンジー社内の課題解消事例を題材に、草稿ができるまでのプロセスを紹介します。
事例はBtoBのキラーコンテンツ
事例記事は営業や広報に直結する資産です。実在の企業の課題と成果を基にしているため、製品カタログと組み合わせると説得力が一層高まり、Web公開や営業資料、セミナー配布など幅広く活用できます。Web掲載では検索流入との相性が良く、一度公開すれば継続的にリード獲得につながります。アンジーではSaaS企業、クラウドプロバイダー、SI企業などの事例を数多く手がけており、その効果を日々実感しています。
事例記事の目的とステークホルダー
事例記事は単に「顧客の声」をまとめた記事ではありません。そこには明確な目的があり、関わるステークホルダーの期待が重なっています。
顧客(課題を抱えた企業):導入によって課題を克服し、ビジネスの価値を高めた実績を示す主人公。
サービスやソリューション提供者(およびそのパートナー):顧客の成功に貢献したことを可視化し、信頼を獲得する立役者。
読者(同じ悩みをもつ企業や見込み客):自社の状況を重ね合わせ、「自分たちも同じように成功できる」と未来を描く、次の主人公。
このように事例記事は、顧客の成功を物語として共有し、サービス提供者の価値を証明し、読者に可能性を見せる役割を果たします。そのためには、明確な構造を持ったストーリーで展開する必要があります。
事例記事の基本構造(6要素)
事例記事の構造を見てみましょう。基本は「課題・解決策・効果」が軸となりますが、より具体的には次の6つの要素に整理できます。
1. 企業・事業の紹介
ソリューションを採用した顧客企業の規模や業界での立ち位置を示し、記事全体の信頼性を担保します。ここで顧客のビジネス価値もアピールします。
2. 顧客の状況と課題
導入前の業務フローや体制を描写し、そこから浮き彫りになった課題を整理します。読者が共感できるような具体的な課題を提示します。
3. ソリューションを選んだ理由
課題解決策を模索する中で、複数の選択肢から最適なサービスを選んだ理由を示します。提案内容やサポート体制の優位性、競合との差別化ポイントなどを整理することで、選択の必然性を伝えます。
4. 導入の過程
選択したサービスや製品をどのように導入し、どのような工夫を行ったかを示します。環境や組織への影響を含めて説明することで、読者は実際の活用イメージを描きやすくなります。
5. 成果
導入後に顧客企業が得た変化を提示します。導入前後の指標変化などの定量データ(コスト削減率や時間短縮)と、現場の声や文化の変化などの定性データを組み合わせ、成果を説得力ある形で示します。
6. 今後の展望
導入を経てビジネスの価値を高めた顧客企業が、次に目指す方向を提示します。あわせてサービス・ソリューション提供企業への評価や今後の関係強化を盛り込み、強固なパートナーシップによる安心感を読者に与えます。
アンジー社内の事例を型に当てはめる
では、この6要素に沿って、当社アンジーが抱えていた社内課題を解決したケースを箇条書きに整理してみます。
1. 企業・事業の紹介
・アンジー(2005年創業)
・編集制作部門とWeb開発部門を併せ持つ
・BtoB記事制作とシステム開発を両輪で展開する制作プロダクション
2. 顧客の状況と課題
・編集制作部門では毎月数十の記事を制作
・文字起こしや初稿作成に時間を取られ、構成や表現磨きに十分な時間を割けない
・文字起こしAIや生成AIを使いたいが、オープンサービスは提供者に学習されるなど情報漏えいリスクがあるため導入をためらっていた
3. ソリューションを選んだ理由
・AWS国内リージョンにプライベート環境を構築すれば、効率化とセキュリティを両立できると判断
・Azure Open AIも検討したが、既に社内でAWSを利用しており、Web開発部門に知見があった
4. 導入の過程
・Web開発部門がAWS上に専用環境を構築
・文字起こしはAmazon TranscribeやAmiVoiceを利用
・生成AIはAmazon Bedrock経由Claude Chatを使用(API利用のためプロバイダによる学習なし)
・データはすべて国内のプライベート環境にセキュア保存
・編集制作部門にヒアリングしながら記事制作フローを実装、何度かイテレーションを重ねた
5. 成果
・インタビュー質問票制作時間を50%削減
・取材後から初稿到達までの時間を約1/3に短縮
・編集者は構成やファクトチェック、表現の磨きあげに集中可能
・進行の見通しが改善し、同じ期間でより多くの案件を受注可能に
6. 今後の展望
・仕組みを標準化し、社外案件にも横展開予定
・コストの問題で事例制作を躊躇している企業を支援
・記事制作だけでなく、Web開発を含めたトータルな提案を目指す
生成AIに草稿作成を依頼
自分で文章を書かなくても、この箇条書きを生成AIに渡して事例の草稿作成を依頼すると、すぐに文章化してくれます。出来上がった草稿の一部を紹介します。
アンジーは2005年に創業し、編集制作部門とWeb開発部門を併せ持つ制作プロダクションです。BtoB記事制作とシステム開発を両輪として展開し、これまでに数多くのメディアや企業のコンテンツ発信を支援してきました。編集制作部門では、メディアや企業からの依頼を受け、毎月数多くの記事制作を担当しています。
しかし、記事制作の現場ではいくつかの課題がありました。特に、取材後の文字起こしや初稿作成は大きな負担となっており、記者や編集者が本来注力すべき構成づくりや表現の磨き込み、事実確認といった作業に十分な時間を割けない状況が続いていました。さらに効率化のために文字起こしAIや生成AIを使いたいと考えていたものの、オープンサービスを利用すると提供者に学習されるなど情報漏えいリスクを抱えており、導入に踏み切れないという問題もありました。
まとめと予告
今回は、事例記事の目的とステークホルダーを整理し、基本的な構造(6要素)を解説したうえで、アンジー社内の課題を素材に、箇条書きから草稿ができるまでを紹介しました。事例は難しそうに見えても、構造さえ押さえれば短時間で草稿まで到達できることがわかります。
次回は、この草稿にタイトル、リード文、本文中の見出し、本文詳細情報の追加、インタビューイーの声、企業データ、課題と効果のハイライトなど、事例記事の説得力を高める要素を加えて完成させていく過程を紹介します。
さらにその次の回では、事例制作を俯瞰し、企画段階から顧客への依頼、公開に至るまでに必要な依頼書・承諾書・質問票・進行管理表などの文書を取り上げ、AIを使ってどこまで作れるかを検証します。
そしてシリーズ後半では、インタビュー形式での事例制作に挑戦します。質問票の詳細設計、取材時の注意点、取材後の文字起こしデータのクレンジング、記事生成のプロンプトまでを段階的に公開していきます。
皆様の取り組みに役立てていただければと思います。次も有用なテクニックや実例をお届けします。