事例記事に必要なアイテムとは:AIが作った草稿に肉付けして記事を完成させよう

B2B取引において、事例記事はまさにキラーコンテンツです。そしてAIを活用すれば、一定の品質の記事を短時間で作ることができます。本連載では、企業が自社で事例記事を制作できるようになるための「セルフサービス型の事例制作」を支援することを目的としています。

前回は、事例記事の基本構造(6要素)に沿って、アンジー社内の課題解消事例を題材に、箇条書きから基本的なストーリー(草稿)を作成しました。

今回はその続編として、事例記事を完成版に近づけるために欠かせない「アイテム」を解説します。各アイテムの役割や作り方、本文の補強方法をステップごとに紹介し、最終的に「読者に読まれる事例」へ仕上げていく流れをお見せします。

草稿と完成版の違い

前回、AIが生成した草稿は「素材を文章化した段階」にすぎません。大まかなストーリーはできあがっていますが、読者に伝わる事例記事としてはまだ完成形とは言えない状態です。

読者に「読む理由」や「成果の具体的なイメージ」を与えるには、事実を並べるだけでは不十分です。完成版の事例記事には、目に留まりやすく、理解しやすく、共感を得られ、信頼につながるための編集上の工夫が求められます。

事例記事に見られる代表的なアイテムと、それぞれがなぜ必要なのか、どのように作ればよいのかを順を追って紹介していきます。

見出しを設計する

読者は記事を最初から最後まで熟読するとは限りません。見出しだけを追って全体像を把握するケースも多くあります。そのため、本文の流れを見出しで明確に示すことが重要です。

事例記事の構成要素は6つありますが、ストーリーの大枠は「課題」「解決策」「成果」の3段階に整理できます。将来展望を加える場合もありますが、多くの場合は成果パートとまとめて簡潔に扱います。

実務では、草稿をこの3パートに分け、それぞれの要点を見出しとして本文中に配置します。見出しはデザイン上、太字や装飾を用い、流し読みでも全体像がつかめるようにします。

プロンプト例
以下は事例記事の草稿です。「課題」→「解決策」→「成果」のパートに分け、それぞれに見出しを追加してください。

このプロンプトを用いて生成AIが作成した見出しは次のとおりです。

  • 【課題】記事制作の効率化とセキュリティの両立が急務に
  • 【解決策】AWSプライベート環境でセキュアなAI活用基盤を構築
  • 【成果】制作時間大幅短縮により付加価値創出業務に集中可能に

見出し自体に「課題」「解決策」「成果」といったラベルを付けることで、流し読みでも内容が直感的に伝わります。

本文の肉付け

草稿は、事実を簡潔に並べた状態です。完成版では、背景や比較検討、工夫のプロセスを補足することで臨場感が生まれます。調査した顧客企業の情報や前提条件、掘り下げた解説を加えながら肉付けを行います。

今回の事例では、次のような要素を追加しました。

・企業の独自性やビジョンの明確化
・クライアントワーク特有のセキュリティ制約の具体化
・Azure OpenAIとの比較による技術選択理由の補強
・セキュリティ対策とアジャイル開発プロセスの詳細化
・「伝える力と届ける力を統合するソリューション」としての将来像の整理

これらを反映した本文(肉付けバージョン全文)は、以下からご覧いただけます。
[肉付けバージョン全文(テキスト)はこちら]

人気(ひとけ)を加える:担当者の声バージョン

ここまでの文章は、記者の視点による解説が中心でした。しかし実際の事例記事には、顧客企業、サービス提供企業、読者という3つの主人公が存在します。

とくに読者の共感を得るためには、顧客企業の担当者や、サービス提供側の実務担当者の声が重要です。記事の要所にコメントを挿入することで、事例に「人気(ひとけ)」が生まれ、説得力が高まります。

同じ立場の担当者や、導入に関与した責任者の発言は、読者に強い納得感を与えます。氏名や肩書きを添えて掲載することで、リアリティも向上します。

ただし、取材していないコメントを捏造することは厳禁です。必ず取材や確認を行い、公開前に表現の了承を得ます。声が得られない場合は、サービス提供企業側の説明にとどめるのが適切です。

今回は、サービス提供側の担当者コメントとして、以下を追加しました。

・企業の独自性とビジョンの明確化
・クライアントワークならではのセキュリティ制約の詳細化
・Azure OpenAIとの比較検討による技術選択根拠の強化
・セキュリティ対策とアジャイル開発プロセスの具体化
・「伝える力と届ける力を統合したソリューション」としての未来展望の拡充

たとえば、このようなコメント引用部分を追加しています

 この点について、システムを開発・デザインした川野辺 亮は次のように語ります。

 「機密情報を扱うこともありますので、効率化だけを優先するわけにはいきません。どこでデータが処理され、どこに保存されるのかを説明できない仕組みは使えない、という前提がありました」

これらを反映した本文は、以下からご覧いただけます。
[コメント追加バージョン全文(テキスト)はこちら]

サービス提供側の担当者コメントを入れるメリットは、比較的容易に「人気(ひとけ)=リアリティ」を加えられることと、顧客側にヒアリングやコメント確認の負担をかけずに事例を公開できる点です。ただし、最低限の原稿確認は必要になります。

本来理想的なのは、顧客企業のコメントを含めた事例です。この点については、次回の記事で詳しく紹介します。

その他のアイテムを整える(タイトル・リード・ハイライト)

本文が整ったら、タイトル、リード、事例のハイライトがわかる課題と効果の箇条書きも仕上げましょう

タイトル:課題と成果を端的に示す

例:「プライベートな環境にAIシステムを構築し効率と情報管理を両立──アンジー社内の編集ワークフロー改善」

リード:成果を先に提示し、読む理由を明確にする

今回紹介した要素を組み合わせることで、AIは次のような文章を生成します。

例:「編集プロダクション業務やWeb開発業務を手がけるアンジーの編集制作部門では、記事制作における文字起こしと初稿作成に多くの時間を費やしていました。AIを活用したいと考えていたものの、外部サービスでは情報漏えいの懸念がありました。Web開発部門がセキュリティを確保したAWS環境にAI文字起こしや生成AIなどの制作支援ツールを構築したことで制作フローは大幅に効率化され、編集者は構成や表現の磨き上げに集中できるようになりました。」

課題と成果の箇条書き:流し読みでも価値が伝わるように

例:
課題(導入前)
・取材後の文字起こしや初稿作成に多くの時間を要し、構成設計や表現の磨き込みに十分な時間を割けなかった
・生成AIや文字起こしAIの活用を検討するも、情報漏えいリスクやデータの扱いを説明できず導入に踏み切れなかった
・クライアントワーク特有のセキュリティ要件と、制作効率向上を両立する仕組みが整っていなかった

成果(導入後)
・インタビュー質問票の作成時間を約50%削減、取材後から初稿までの時間を約3分の1に短縮
・編集者が構成設計、表現のブラッシュアップ、ファクトチェックといった付加価値の高い工程に集中可能に
・セキュアなAI活用基盤を確立し、社内外に説明可能な制作環境を構築。今後の横展開に向けた基盤を整備

顧客の情報を整える

事例記事では多くの場合、顧客企業の概要が本文とは別枠で掲載されます。これは記事の信頼性を高めると同時に、読者が「自社と近い企業かどうか」を判断するための手がかりになるためです。企業概要には、業種、規模、事業内容といった基本情報を整理して記載します。

また、本文では触れきれない企業の特徴を補足できるため、掲載される企業にとっても有効なアピールの場になります。書き手にとっても、企業情報を整理する過程で本文を補強する材料が見つかることが多く、制作の起点として有効です。

例:アンジー(社内事例)
会社名:株式会社アンジー
設立:2005年
社員数:6名(アルバイト含む)
Webサイト:http://andg.net

出版物などのアナログメディアから、Web制作、アプリ開発までを手がけるクリエイティブスタジオ。ANDG(アンジー)は、「アナログとデジタルの融合」という理念から名付けられました。

事例記事のテキスト原稿として必要な要素が揃いました
[完成した記事の全文はこちら]

まとめと予告

今回は、AIで生成した草稿を「完成版」に近づけるための具体的な手順を解説しました。事例記事に必要な要素を整理しながら、本文の肉付け、担当者コメントの追加、タイトルやリードといった外枠の整え方までを紹介し、ポイントを押さえればここまで仕上げられることを示しました。

事例記事において、最も読者の関心を集めるのは本来、顧客の声です。顧客のコメントが加わることで、事例の説得力はさらに高まります。一方で、顧客の声を得るためにはインタビューが必要となり、その過程では依頼や確認、進行管理といった追加のプロセスが発生します。

次回は視点をさらに広げ、事例制作全体を俯瞰します。依頼書、承諾書、質問票、進行管理表といった関連文書を整理し、生成AIを使ってテンプレートを作っていきます。