AI記事制作の6年間——3500本の記事制作から生まれたワークフローとCLAUDE.mdファイル

「AIを使えば、記事制作が楽になるんじゃないか」と試してみたものの、うまくいかなかった——という声をよく聞きます。出てきた文章はそれっぽいけど薄い。品質が安定しない。結局、直すほうが時間がかかる。

なぜか。ツールを入れただけでは変わらないからです。

KIJI Base(記事ベース)は、AIを使ったコンテンツ制作を実際に運営してきた株式会社アンジーが立ち上げた記事制作内製化支援サービスです。

30年以上のキャリアを持つ編集者・取材記者である私(代表取締役 森英信)が、AIとの協働を始めて6年。3500本以上の制作現場から積み上げてきたノウハウが土台になっています。この記事では、そのワークフローの進化と、再現性を生んでいるAIへの指示書としての「CLAUDE.md」について説明します。

AI以前の現実

AI以前、取材記事1本を仕上げるのに、およそ7〜8時間かかっていました。インタビュー60〜90分・文字起こし2〜3時間・構成と執筆3〜4時間・編集1時間。

2025年は私一人で590本の記事制作に携わり、そのうちの360本が取材記事でした。従来のやり方では1人でこなせる数字ではありません。

では、どう実現するか。2020年から積み上げてきたAIワークフローがその答えです。


数字が示す6年間

全体本数森の担当記事数森の割合
2020年185本97本52%
2021年613本418本68%
2022年744本347本47%
2023年724本452本62%
2024年670本465本69%
2025年750本590本79%

2020年から2021年にかけて本数が3倍以上に跳ね上がり、2025年には私一人で590本を担当しています。この数字は、ツール導入と試行錯誤の記録でもあります。


5つの転換点

第1フェーズ(2020年末〜):AI文字起こしとの出会い

最初の転機は、Amazon Transcribeの導入です。

2020年終盤、AWSのAI音声認識サービスをターミナルから操作して使い始めました。60分のインタビューの文字起こしが数分で終わる。クレンジングを含めても1時間以内。それまで2〜3時間かかっていた工程が、大幅に圧縮されています。

当初から情報管理を最優先に置き、取材相手の情報はAWSのプライベート環境(東京リージョン)のみで処理する体制を構築しました。取材記者として当然の姿勢であり、この方針は今も変わっていません。

第2フェーズ(2021年〜):ツール化で案件数が急増

2021年から英語インタビューを開始。ターミナル操作をWebアプリ化した社内ツール「Mojio(モジオ)」を開発し、日本語音声認識API「AmiVoice」での変換プロセスを組み込んで日英両対応の文字起こし環境を整備しました。

文字起こしのボトルネックが解消されたことで、取り組める案件数が一気に広がります。外部ライターへの発注もクレンジング済みテキストを渡す形に変わり、編集者として本来の仕事——構成・品質管理——に集中できる体制が整いました。この年、全体の年間本数は185本から613本(前年比3倍以上)を記録しています。

第3フェーズ(2023年〜):生成AIの導入とプロンプトの精緻化

2023年からChatGPTClaude.aiを業務に組み込みました。構成案・見出し生成・専門用語の解説などを補助的に使い始めた時期です。

問題はすぐに浮かび上がりました。文体の混在・単調な文末・口語表現の残存。実際に言っていない発言の生成……読める文章にはなるが、編集者の目線では使えないものが続出しました。

そこで着手したのが、指示の精緻化です。文体・引用率・口語変換ルールなどを書き下ろした指示ファイルの原型である、汎用プロンプトのテキストファイルがこの時期に生まれています。また、情報管理上、外部サービスに情報を送る場合は固有名詞をローカルで匿名化してから入力するルールも徹底していました。

第4フェーズ(2025年〜):プライベート環境でAIが本格稼働

2025年3月、AWS上でClaudeを使うClaude Chat on Bedrock環境を整備しました。

当社が管理するAWS上のプライベート環境で動作するため、取材資料も含めてAIチャットに渡せるようになり、蓄積してきた汎用プロンプトとの組み合わせで品質と再現性が一気に安定しています。従来ワークフローで240分かかっていた作業が105分まで圧縮(約56%削減)。編集・校正に使える時間が増えた結果、アウトプットの品質も上がりました。

しかしかし、大容量PDF資料は読み込めないのでテキストをコピペして渡す必要があり、Web調査は外部サービスで収集・テキスト化してからBedrockに貼り付けるという手作業が残っていました。

第5フェーズ(2026年2月〜):Claude Codeで全工程が統合される

2026年2月、Claude Code(Bedrock)の導入でワークフローが完成しました。汎用プロンプトはここでCLAUDE.mdとなり、記事制作の全工程を束ねる指示ファイルになっています。

「資料収集・分析」「文字起こしクレンジング」「構成案生成」「執筆」「編集チェック」が一本のパイプラインとして統合され、WebリサーチからPDF読み込み、草稿生成、推敲・編集まで、すべてプライベート環境内で完結する。これが現在のワークフローです。


再現性を生んでいるもの——CLAUDE.md

6年ほどの試行錯誤を経て確立したのが、CLAUDE.mdという執筆指示ファイルです。

文体・引用率・口語表現の変換ルール・発言者の帰属表現・年月の絶対値表記——取材記者・編集者として長年の現場で身につけてきた作法を、AIが毎回再現できる形に書き下ろしたもの。このファイルがあることで、同じ品質基準を何度でも再現できます。

ただし、ファイルを渡すだけでは不十分です。自社のコンテンツ方針に合わせたカスタマイズ、AIに任せる工程と人が担う工程の設計——そこには人間の判断が必要です。


KIJI Baseの伴走支援について

KIJI Baseの伴走支援は、この「人の判断が必要な工程」を一緒に設計することを目的にしています。

ゼロから試行錯誤する必要はありません。すでに機能することがわかっているフローを、自社に移植するところから始められます。編集者・取材記者として6年間、3500本以上の現場で積み上げてきた判断基準があるからこそ、提供できるサービスです。


この記事で紹介したワークフローで使用している、インタビュー・講演レポート記事などに対応したCLAUDE.mdを無償提供しています。

KIJI Baseについてのお問い合わせ・CLAUDE.mdのご請求はこちらから
https://andg.net/kiji-base

付録:AI協働ワークフロー進化のあゆみ

時期導入したもの変化
2020年末Amazon Transcribe(ターミナル操作)文字起こし自動化・情報管理方針を確立
2021年〜社内ツール「Mojio」・AmiVoice API全体613本に急増(前年比3倍以上)
2023年〜ChatGPT・Claude.ai(匿名化運用)・CLAUDE.mdの原型生成AIによる構成・執筆補助の開始
2025年〜Bedrock Claude Chat(Claude 3.7 Sonnet~)匿名化不要・品質と再現性が安定
2026年2月〜Claude Code(Bedrock API)全工程の統合・代表担当590本