なぜAI記事は「薄い」のか——引用率15〜30%というルールの理由

生成AIを使ったインタビュー・講演レポートなどの記事の作成は、文字起こしデータと資料を渡して「記事を書いてください」と指示するところから始まります。(文字起こしのAIワークフローについては別記事で詳しく解説します)

ところが、たいていこういう記事が返ってきます。

発言者の言葉がほぼそのまま並んでいる。読めないわけではない。でも、なんとなく薄い。だらだらと発言を羅列して、トピックの強弱がない。記者が書いた記事というより、発言した内容の書き起こしに近い。

これは、AIが悪いのではありません。指示がないから、AIは「発言をまとめる」という最短ルートを選んでいるのです。

引用率とは何か

インタビュー記事には大きく2つの形式があります。発言をそのまま並べるQ&A形式と、記者が地の文で文脈を整理しながら、要所に発言を「」で引用するナラティブ形式です。この記事が対象としているのは後者——記者の地の文と「」の引用が組み合わさったナラティブ形式です。

アンジーでは、AI駆動の記事制作内製化を支援するサービス「KIJI Base」を提供しており、サービス利用者でなくても、AIへの記事制作指示書、CLAUDE.mdを希望者に無償で配布しています。引用率は、このCLAUDE.mdに記した設定項目のひとつで、ナラティブ形式の記事全体の文字数に占める直接引用(「」で囲んだ発言)の割合を指します。

15〜30%というのは、業界で定められた基準があるわけではありません。筆者が長年の現場経験の中で「このくらいがちょうどいい」と感じてきた感覚値を、数字に落とし込んだものです。残りの70〜85%は、記者が自分の言葉で書いた「地の文」です。

ところがAIに指示なしで記事を書かせると、引用率が50〜80%になることも珍しくありません。文字起こしの内容をそのまま「」に入れてつなぐだけなら、AIにとってそれが最も簡単な処理だからです。しかし、それだと、発言者の最も伝えたかったことなど、要点が掴みにくいです。


引用率が高すぎると何が起きるか

引用が多すぎる記事には、いくつかの問題が生じます。

記者の視点が消える
記事とは、記者が取材を通じて得た情報を、読者にとって意味のある形に再構成したものです。発言を並べるだけでは、「何が重要なのか」「なぜそれが意味を持つのか」という文脈が失われます。読者は自分で解釈しなければならない。

読みにくくなる
長い引用が続くと、読者は「誰が何を言っているのか」を追うだけで疲れます。特にインタビュー相手が複数いる場合、長い引用の連続は混乱のもとになります。

なお、引用が多いほど口語表現の混入も増えます。その対処法はCLAUDE.mdの別のルールで対応します。詳しくは別の記事で解説します。


引用率が低すぎると何が起きるか

逆に、引用を減らしすぎると別の問題が起きます。

発言者の個性が消える
インタビュー記事の魅力の一つは、発言者の言葉そのものにあります。その人ならではの表現、熱量、語り口——これらは記者の言葉で要約すると失われてしまいます。

ファクトの根拠が薄くなる
数字や具体的な事実を発言者が述べた場合、引用で示すことで「この人が言った」という根拠になります。間接的な表現だけだと、読者に「本当にそう言ったのか?」という疑念を残すことがあります。


CLAUDE.mdでの設定方法

弊社のCLAUDE.mdには、以下のように記述しています。

引用率管理:15〜30%
引用選択基準:
- 発言者の人柄・熱意・専門性が伝わる部分
- 印象的・独自性の高い表現
- 数字・具体例を含む重要主張

さらに、引用以外の部分をどう書くかについても指示を入れています。

記者視点の拡充方法:
- 発言内容を記者の言葉で要約・解説
- 「〜によると」「〜という」で間接的に伝える
- 背景情報や補足説明を追加

これをCLAUDE.mdに書いておくことで、AIは「引用を適切な割合に絞り、残りは記者の言葉で書く」という動きを自動的に行うようになります。


AI生成記事と記者執筆の品質を比べてみる

同じ文字起こしから、指示なしの場合と、引用率管理ありの場合でどう変わるかを見てみます。

指示なし(引用率約85%)

創業の経緯について代表は「私たちがこのサービスを始めたのは、やっぱり、現場で困っている人たちの声を聞いたからなんです。本当に大変そうで、なんとかしたいなと思って。最初は小さいチームで始めたんですけど、だんだんと広がってきて、今では100社以上に使っていただいています。これからも、ユーザーの声を大切にしながら、もっといいサービスにしていきたいと思っています」と語った。

引用率管理あり(引用率約25%)

創業のきっかけは、現場の声だった。「現場で困っている人たちの声を聞いたことが始まりです」と代表は振り返る。小規模なチームでスタートしたサービスは、ユーザーとの対話を重ねながら改善を続け、現在では100社以上に導入されている。

違いは明らかです。後者には記者の視点があり、情報が整理されており、読みやすい。そして、発言者の肉声も適切に残っています。


引用率は「正解」ではなく「目安」

この15〜30%はナラティブ形式に限った目安です。記者やメディアのスタイルによって変わります。なお、Q&A形式のインタビュー記事は、発言で構成されるため引用率は気にしません。KIJI Baseで配布しているCLAUDE.mdでは、記事タイプによってこのルールの適用を切り替えられるように設計しています。

私のワークフローでは、執筆の前に文字起こし全体を見直して、引用したほうがいい部分をメモしておきます。

たとえば、3000〜5000字のインタビュー記事を3〜5パートで構成するとき、印象的な言葉——共感や課題、達成感が伝わるもの——を1パートに1〜2箇所だけ選びます。それ以外は記者による状況説明で補います。

感情が伝わる引用と、状況を整理する地の文を交互に置くことで、読者が「理解」と「共感」を行き来できます。そのリズムを意識しているうちに、自然とこの比率に落ち着いていきました。

重要なのは、引用率を意識する習慣を持つことです。AIに任せると意識なしに高くなりがちなこの数字を、意図的にコントロールすることで、記事の質が大きく変わるのです。

文字起こしのテキストに、(ここを引用)とラベルをつけてAIに渡すのもいいかもしれません。


次回は、引用の中身に関わる口語表現の整形ルールを解説します。「やっぱり」「しっかり」「〜かなと思います」——これらをどう書き言葉に変換するか、その理由と具体的な変換ルールをお伝えします。


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https://andg.net/kiji-base